トンボ玉作品

トンボ玉作品について

  私は特に実在の生き物にこだわって作品を作っていますが、これには「一般的にあまり関心を持たれていない身近な生き物たちや自然環境の魅力をじんわりと多くの人に伝えたい」という密かな思いが込められています。トンボ玉で一番表現したいのは人気の生き物でも珍しい変わった生き物でもなく、その辺に普通にいる(もしくは昔は普通にいた)のにあまり興味を持たれていない地味な生き物たちが活き活きと暮らす素敵な光景です。
  私が以前研究職に就いていた時に「ウミヘビ」というものすごくマイナーな動物の生態を研究していたんですが(一応、国内で唯一のウミヘビ専門家でした)、保護が叫ばれているウミガメ類と違っていくつかのウミヘビは人々に全く関心を持たれないまま年々個体数が減少しているという残念な状況が続いています。そんな経験もあって研究者から作家に転身してからも、少しでも多くの人に色々な生き物の魅力を伝えられたら...という思いが根底にあり、現在の作風で作品を発表しています。

  現在制作しているトンボ玉作品の主なコンセプトは「今存在する生き物や自然環境をガラスに記録すること」。ガラスという長期間安定した素材(=極めて保存性が高いメディア)に数十年後には消えてしまうかもしれないものを記録しておこうという試みだったりします。後世に残すこと、そしてより多くの人に見てもらうことが目的なので作品は「標本」という形をとり、標本箱や標本壜、標本展示台等に収めて世に出しています。アートな標本という存在になればいいな、とこっそりと思っています。
  トンボ玉は小さな球体という非常に破損しにくい形状で、古来より長い年月に渡って人から人に受け継がれている存在です。トンボ玉として作品を作ることで未来の残存率がちょっと高くなるんじゃないかと期待しています。

  ちなみに私はトンボ玉を創作する際に様々なマイルールを設定しているのですが、「空想系」の作品だけはこれらのルールや上記のコンセプトとは無関係に自由に創作しているシリーズです。 


増永元


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